やらせと演出

Sep 26, 2016

もう20年近く昔のテレビ業界の話ですから今のようにコンプライアンスとか個人情報を細かく言うような時代ではありませんでした。当然そこにはバラエティ番組として面白くしようとするテレビ側の「演出」が入ってきます。そのため、愛貧のお店めぐりをしていると、ご主人の口から「やらせ」や「演出」の話が出てきます。これはお店めぐりをする楽しみの一つでもありました。

たとえば、番組にはご主人や達人が泣いたり怒ったり切れたりする場面が頻繁に登場しますが、達人も修業人も普通のことではそうそう腹を立てたりしません。そこで番組側のスタッフは、感情をあらわにさせようとあの手この手で「演出」をしていたようです。もちろん番組には台本があり、達人側はもちろん、場合によっては修業人の手にもわたっています。

番組は達人に対し、修業人に無理難題を仕掛けるようにけしかけます。たとえば、ほかのことで弱音を吐いた修業人のコメントを撮影して切り取って編集し、あたかも達人への悪口や、修業に対する不平不満のように見せかけ、それをこっそり達人に見せて達人を激怒させるというやり方もあったとかなかったとか。

従順な修業人には「ここで修業を投げ出してください」みたいに演出をお願いしていたといううわさもあったりなかったり。ある修業@沖縄では、ご主人が番組の「やらせ」に激怒して帰ってしまい、それが番組では修業投げ出しのように扱われていたり。また、逆に番組ではかなり険悪な達人VS修業人であっても、実際はしっかりと信頼関係をもって修業している場合もあります。

2001年頃には、週刊実話に男女7人同時修行のおっかぁが、取材の状況について取材に応じています。もともと20代の息子が修業するはずだったのが、交通事故に遭って母親が代理に出演することになったという。その記事では、カメラが回ってないところで達人の弟子達に「お前らは横から技術を盗んでいく」などとなじられたとか、 リタイアしたときに持ち合わせがなくしかも都内の集合場所から遠く離れた地での修行だったのに、元の集合場所までの交通費を支給してくれなかったというような話が載っていたらしいのです(残念ながら、まだ実物を読んでいません)。

ただ、寝るとき以外はカメラとマイクが付いて回ったというのは本当のようですし、起きている間はずっと働きづめで睡眠は3時間程度だったとか、食事も満足に食べさせてもらえず、夕方に一膳飯と汁物と魚一切れだったというので、60歳を過ぎた人には過酷だったのはたしかだったかと思います。

一方で、たこ焼きの達人「ひっぱりだこ」の揚野氏は、たこ吉修行のリストラサラリーマンに対する苦情を述べた中で「尚、今回の取材および放映に当たっては一切の虚偽がなかったことを達人本人が証明致します。そういうのがキライな私はスタート前に製作会社に対し(一切のやらせ、強要はせず貴社中心の取材といたします。)と念書をとったぐらいですから・・・」と書いています。

あくまで私の主観ですが、達人がTVでの宣伝効果を狙ったり、修行人を嘲り笑うようなスタンスで修行人に対応したという例は無いと思います。あるとすれば台本を書いた番組側が、現場でできる範囲で「演出」していたということではないかと思います。




伊藤Pのモヤモヤ仕事術という本があります。伊藤Pこと伊藤隆行さんは、テレビ東京の名物プロデューサーで、ディレクターデビューが愛の貧乏脱出大作戦だったそうです。この本の中に愛貧はヤラセか演出か、という問に対する制作側の答えがあります。